ウミネコラム

「ウミネコアーキ」が、建築について日々感じていることやら読本のまとめやらを色々と書き連ねるところ。

【感想まとめ】「能作淳平展&ギャラリートーク04」

過去のトークイベントの感想まとめ。

*****

 

「能作淳平展&ギャラリートーク04」
@プリズミックギャラリー

f:id:takuya-w-1008:20180102030618j:plain

 

能作淳平さんの展覧会がもうすぐ終わってしまうので観に行こうと思ったらちょうどトークイベントの日だったらしく、ぬるっと拝聴。

*****
テーマ【「こと」から「もの」へ】
スピーカー:鳥巣智行×大来優×能作淳平

今回は最近注目の「さんごさん」にまつわるお話。
鳥巣さんと大来さんは「さんごさん」プロジェクトの共同発起人であり、電通の精鋭さんたち。そんな彼らが会社ではなく個人的に(副業的に)このプロジェクトを始めたところに面白さがある。

とはいえ、まずは能作さんの最近の建築思考の振り返りから。
これまでの建築界の動向を、「ロマン主義的オブジェ/関係性の美学的オブジェクト」の大きく2パターンとして捉え、第三の可能性として、エリー・デューリングの<プロトタイプ>論を援用した<モノ>自体の価値意識を志向していると言える。分かりやすい作家性でもなく、みんなでワークショップでもない、試作としての「モノ」。
そこから、「ビューロクラシー/デモクラシー」に取り替わる<アドホクラシー>(アルビン=トフラーが1970年代に提唱)を掲げ、状況に応じて変化し対応する空間あるいは建築を目指していると考えられる。

その具体案とも言えるのが「さんごさん」。
仮に自分なりに整理すると、1975年以前を「モノ」至上主義の時代だとすれば、1975~2000年は「コト」消費の時代、そして2000年~は揺り戻して「コト」を内包した「モノ」の時代に移り変わっていると思われる。それは鳥巣さん・大来さんが電通という広告業界の最前線にいるからこそ敏感に体感し得る変化だったのだろう。
「さんごさん」はとにかく良い意味で場当たりに生成変化させていっている部分と、戦略的にメディアを使っていた部分があり、実はトークイベントタイトルの言う通りではなく、「コト」と「モノ」の間の往復運動こそが重要なんだと受け取れる。
<アドホクラシー>は"個性の有る公共空間”を実現する思想であり、その手段としてサンゴ・溶岩・べんがら色といった島の特性を建築にインストールしたり、図書館機能のために「人生の3冊」企画が提案されたりと様々な実験が行われていることに特徴がある。
恐らく、誰でも受け入れるのではなく、「さんごさん」に接続するにはフィルターがあり、それが強度を支持するのであろう。アドホックであることは、接続する/しないを個人に選択させることである。
接続/切断を人によって、その時々によって切り替えられることが必要なんだろう。

「さんごさん」において重要だと思うのが、ここを運営・企画するプレイヤーが主観的な興味関心で突き進んでいること。それが結果的に地域に貢献するようになっている。まずは個人の実験場である、ということ。それがもたらす強度というものがある。
それはつまり、何か地域に問題/課題があってそれをどうにかしたい!という問題解決型ではなく、問題提起をするスペキュラティヴ・デザインへと移行していることを意味する。
社会善を主題とするのではなく異なる価値を提起することに、地方の可能性の一端がある。
*****

改めて、電通の方々は面白いことを常に考え続けているんだなと実感。とても刺激的だったと同時に、自分のアイデア力の乏しさを痛感した。やりたいと思っていることが、既に高度に実装されていることの現実よ。
その中で一体自分をどのように位置づけていくか、何をやるのか考えていかないといけない。